ジャイプール
100年前、ジャイプールの町はここを訪れた王子を歓迎して、町中をピンクに染めました。それ以来この町は、その色のままになっています。大タール砂漠の外れに位置するジャイプールは、ラジャスタン地方の入り口であり、ラージプートの地、騎士道と武道の伝統が息づく地、英雄と美女の伝説の地です。この町には壮厳な宮殿、色鮮やかなバザール、町を包み込むようにそびえる城砦などがあり、さながら中世の町そのものです。女たちはゆれるスカートに色とりどりのベールをまとい、銀の装飾品で飾りたて、長身の男たちはターバンを巻き、町には、ラクダに引かれた荷車がゴトゴト通る………そんな光景はまるで幻のようです。
そんな幻想的中世のイメージとは裏腹に、ジャイプールはたった260年の歴史しかありません。ムガール朝の衰退に乗じて、藩王(マハラジャ)ジャイ・シンが、先祖代々の丘陵城砦であるアンベール城を出て、自らの名にちなんだこの町を建設しました。ジャイプールは碁盤の目状に設計された近代的な都市なのです。ジャイ・シンは優れた占星学者でもあり、膨大な量の煉瓦やモルタルを使って、目を見張るほど精密な天文台、ジャンタル・マンタルを建てました。ジャンタル・マンタルからさほど離れていないところに、美しいハワ・マハルがあります。ハワ・マハルはピンク色の高い建物で、正面には繊細な透かし彫りの戸がはめられていて、ジャイプールの王妃や宮廷の貴婦人達が俗人の目に触れることなく街路で繰り広げられる祭りの様子や行列をここからこっそり、かいま見ていました。
ムガール様式とラジャスタン風の建築様式が融合してできたシティ・パレスは、現在では博物館となっており、ジャイプールの王朝を物語る品々が展示されています。大謁見の間には、美術品や写本が陳列されています。ルビー、ルリ、黄金をすり潰して作った顔料で描かれた細密画が壁に彩りを加えています。膨大な武器コレクションの中には、水晶のつかの黄金の短剣、宝石がちりばめられた儀典用の剣、ラクダ乗り用に作られた銃などの骨董品があります。この博物館には世界で最も大きいと思われる銀製の瓶があります。これは、王子が英国を旅行したとき、聖なるガンジス河の水を運ぶ目的に使われました。藩王支配の時代は終わりましたが、ジャイプールには今なお王朝風の伝統美術が息づいています。賑々しいバザールの店々には手工芸品や宝石があふれんばかりに並でいます。細密画は今でも手すき紙や象牙に描かれています。
ジャイプールからほんの11キロ離れたところに、6世紀もの長きにわたって首都であり続けたアンベールの丘城があります。宮廷や庭園が何段にもなって丘の上に作り上げられています。鏡の間シェーシュ・マハルはこの種の広間の中では最高傑作といえるでしょう。小さな鏡が無数に飾り付けられているので、たった一本のロウソクの炎も何千本にも反射して輝くのです。
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